建築士事務所の開設者には、建築士法で次のことが定められています。
1. 設計等の業務に関する報告書(建築士法第23条の6、建築士法施行規則第20条の3)
開設者は、事業年度ごとに建築士法第23条の6及び建築士法施行規則第20条の3の規定により定める事項(第六号の二書式)を提出しなければなりません。
(書面に記載する事項)
① 事務所の業務実績
② 所属建築士名簿
③ 所属建築士の業務の実績
④ 管理建築士による意見の概要
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2. 再委託の制限(建築士法第24条の3、建築士法施行令第8条)
委託者の承諾を得た場合においても、委託を受けた設計又は工事監理の業務を建築士事務所の開設者以外に再委託してはなりません。また、階数が3以上、かつ、床面積の合計が 1,000㎡以上の共同住宅で新築工事に係るものについては、委託者が許諾した場合であっても、他の建築事務所の開設者に委託を受けた設計又は工事監理の一括再委託(いわゆる丸投げ)が禁止されています。
3. 帳簿及び図書の保存(建築士法第24条の4、建築士法施行規則第21条)
建築士事務所の開設者は、その業務に関する帳簿及びその建築士事務所に所属する建築士が建築士事務所の業務として作成した建築士でなければ設計できない設計図書等を、作成した日から起算して15年間保存しなければなりません。
(帳簿の記載事項)
① 契約の年月日
② 契約の相手方の氏名又は名称
③ 業務の種類及びその概要
④ 業務の終了の年月日
⑤ 報酬の額
⑥ 業務に従事した建築士及び建築設備士の氏名
⑦ 業務の一部を委託した場合にあっては、当該委託に係る業務の概要並びに受託者の氏名又は名称及び住所
⑧ 管理建築士が開設者に対し、必要な意見が述べられたときは、当該意見の概要
(保存する図書)
① 配置図、各階平面図、二面以上の立面図及び二面以上の断面図
② 当該設計が建築基準法第6条第1項第2号又は第3号に係るものであるときは、①のほか、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書
4. 標識の掲示(建築士法第24条の5、建築士法施行規則第22条(第7号様式)(平成19年12月20日改正)
開設者は、建築士事務所において、公衆の見やすい場所に、次の標識を掲げなければなりません。
標識の大きさは、縦 25㎝以上、横 40㎝以上で、記載内容は、建築士事務所の名称・登録番号・開設者名・管理建築士名・登録の有効期間等を記載しなければなりません(事務所に掲げる標識例)。
標識はご自分で作成するか社団法人東京都建築士事務所協会等でご購入ください。
5. 書類の閲覧(建築士法第24条の6、建築士法施行規則第22条の2)
開設者は、当該建築士事務所が行った業務の実績、所属建築士の氏名及び業務の実績、その他国土交通省令(建築士法施行規則第22条の2)で定める事項を記載した書類(第七号の二書式)、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結等を講じている場合はその内容を記載した書類を、建築士事務所に備え置き(3年間)、設計等を委託しようとする建築主(建築主になろうとする者を含む)の求めに応じ、閲覧させなければなりません。
建築士法施行規則第22条の2
①建築士事務所の名称及び所在地、②当該建築士事務所の開設者の氏名、③当該建築士事務所の一級建築士、二級建築士又は木造建築士の別、④登録番号、⑤登録の有効期間、⑥所属建築士の氏名・その他の一級建築士、二級建築士又は木造建築士の別・登録番号・定期講習のうち直近のものを受けた日・構造、設備設計一級建築士及び管理建築士である場合はその旨など
6. 設計・工事監理契約の際の重要事項説明(建築士法第24条の7、建築士法施行規則第22条の2の2)
開設者は、設計又は工事監理の契約締結時に、建築士法第24条の7及び建築士法施行規則第22条の2の2の規定により、あらかじめ建築主に対し、管理建築士又は所属建築士をして、設計委託契約又は工事監理委託契約の内容及びその履行に関する事項を記載した書面を交付して説明させなければなりません。
(重要事項)
①設計図書の種類、②工事と設計図書との照合の方法及び工事監理の実施の状況に関する報告の方法、③設計又は工事監理に従事することとなる建築士の氏名及び一級・二級・木造建築士の別、構造・設備設計一級建築士である場合はその旨、④報酬の額及び支払時期、⑤契約の解除に関する事項、⑥その他建築士法施行規則で定める事項
7. 書面の交付(建築士法第24条の8、建築士法施行規則第22条の3)
開設者は、当該建築主から設計又は工事監理の委託を受けたときは、建築士法第24条の8及び建築士法施行規則第22条の3で定める事項を記載した書面を当該建築主に交付しなければなりません。
(書面に記載する事項)
①設計又は工事監理の種類及びその内容、②設計又は工事監理の実施の期間及び方法、③報酬の額及び支払いの時期、③契約の解除に関する事項、④建築士事務所の名称及び所在地、⑤契約の年月日、⑥契約の相手方の氏名又は名称、⑦設計又は工事監理に従事する建築士及び業務に従事する建築設備士の氏名、⑧設計又は工事監理の一部を委託する場合にあっては、当該委託に係る設計又は工事監理の概要並びに受託者の氏名又は名称及び住所など
*当該書面を作成したときは、書面に記名押印又は署名をしなければなりません。
8. 立入検査協力の義務(建築士法第26条の2、第41条第13号)
建築士事務所の状況をたえず的確に把握することで、適切な建築士行政を行うことを目的として規定されたもので、正当な理由がなくて拒む等の行為をすると罰せられることがあります。